2025.01.11
S3|漆と藍の基礎を学ぶ!
こんにちは、藍の學校事務局です。
こちらのページでは、1年を通して、どんなプログラムが開催されたか、「藍の學校」の活動についてお伝えしていきます。
今回は、Study room3の初回授業、漆と藍にまつわるレクチャーのレポートです!
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【Study room3 とは?】
Study room3は、2022年に行った「藍生かし直しプロジェクト」の第2弾となる取り組みです。「藍生かし直し」とは伝統文化である藍染を軸に日本の伝統を再度見直し、新しい視点を見つけることを目的としています。2022年の第1弾では、藍×西陣織の融合に注目し研究を進めました。第2弾となる今回は藍と漆に着眼点をおき、引箔という技法を用いた「藍漆糸」の制作に挑戦します。今回は漆問屋の佐藤喜代松商店さんにもご協力いただき、これまで実現しないだろうと考えられていた「藍漆」の研究を行います。
また初年度の藍の学校では、産地沖縄に焦点を当てています。Study room3でも、受講生自らが現地へ赴き、沖縄の伝統染色である紅型の歴史や作品に実際にふれ、そこから自分達のオリジナルデザインを考えて行きます。
『藍漆×紅型×西陣織』の融合を目的とした現代に活かせるプロダクトの制作を目指します。オリジナルデザインを考えて行きます。
Study room3の初回授業は、これから学生たちが扱う「漆」について、「藍」についてのオンラインレクチャーからスタートしました。
◉樹木の血液。漆のお話
「漆」について教えてくださったのは、江戸蒔絵赤塚派の一家に生まれ、ご家族で代々漆器制作をされてきた、漆作家の三田村有芳先生です。現在は日常的ではなくなった漆器ですが、今でもお茶碗や菓子盆、茶器や床間の飾りなど、さまざまな暮らしの道具に漆が使われてきました。
漆は、木が傷ついた際に分泌される樹液のこと。人間でいう、血液のような存在が素材を精製して、使用しています。
空気中の湿度と温度がある一定に保たれると「固化」する特徴を持ち、工芸においては塗料だけでなく接着剤、漢方としても使われてきました。
この樹液が分泌される漆の木は、日本、中国、韓国を中心に、東南アジアにのみ存在しています。
「ウルシオール」を多く含む日本や中国の漆のほか、「ラッコール」を含むもの、「チチオール」を含むものなど、主成分の違う3種類の漆が存在しています。現在では日本産の漆が仕上げの光沢出しに使われることが多いのだそうです。
現在、日本の漆の採集方法は主に「殺し掻き」が用いられています。
10年から15年ものの漆の木をひとシーズンで採集しきったあと伐採する、という手法です。
漆掻き専用のカンナやカマを用いて、樹皮に傷をつけて染み出した樹液を採集。一本の木からは、トータルでおおよそ180cc程度の漆が採れるそうですが、栽培年数から考えても、とっても貴重な素材であることがわかります。
中国で主に使われる「養生掻き」は、樹皮にV字の傷をつけ、Vの先端に漆を受け止める貝殻などを装着。溜まった漆を回収する、という掻き方で、木を枯らさずに長年採集することができるものの、一度の採集量は少ないといいます。
採集した漆の精製については、後日伺う「佐藤喜代松商店」さんで詳しくお話をお伺いすることに!
漆の歴史についてなどのお話も続き、漆という素材の特徴や貴重さがひしひしと伝わってくるレクチャーでした。
三田村先生からは、中国の漆採集の現場で漆を舐めてみたり、漆の木の芽を天ぷらにして食べてみたりと、体を使って素材を探求してきたエピソードも。
漆のように、かぶれることがある素材は要注意でもありますが、使用する素材へのアプローチの方法はいろいろなんだなと、三田村先生のお話をお聞きすると感じます。
興味関心の持ち方はいろいろですが、自分の体で体験して考えてみるおもしろさを教えていただきました✨
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◉蓼藍(たであい)をすくもに。藍のお話
藍については、藍染作家であり、<藍の學校>を主宰する、梅崎由起子先生からのレクチャーがありました。
葉の中に、藍色の成分「インジゴ」を含む藍草(含藍植物)は、世界中に数百種類あると言われ、
主には、日本の蓼藍(たであい)、琉球藍(りゅうきゅうあい)のほか、ヨーロッパや中国のウォード、インドのインド藍など、各地で栽培されています。
日本の藍染は江戸時代をピークに、その後は化学染料の普及とともに徐々に衰退。しかし現在では、環境配慮への関心の高まりなども相まって、ハイブランドの製品にも藍染が採用されるなど、再び天然の美しい藍色が注目を集めているのです。
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では植物の中にあるインジゴを、どのように抽出するのか。
草木染めの多くは、染料のもととなる植物を煮ますが、藍染は別の方法で、酸化と還元を用いて染めが行われます。
染料の種類として主流なのは「すくも」「沈殿藍(泥藍)」の2種類。
今回Study room3でフィールドワークに行く沖縄やインドでは、「沈殿藍」が
収穫した琉球藍を水に沈めて数日かけて発酵させ、石灰を入れて空気に触れさせるように撹拌。底に沈んだものを布で漉すことで不純物が抜け、染めるための染料として使用できる状態に。
「すくも」とは、日本独自の手法です。収穫した蓼藍の葉を乾燥させたのち、さらに水をかけながら発酵させることで染料にするというもの。発酵している藍の山は内部が70℃ほどになるのだそう。一年がかりで藍を育て、すくもをつくる「藍師」の方々がいるからこそ、美しいあの色が生まれているのですね。
また、この「すくも」を藍建てといってさらに発酵させ、染液にします。材料は、すくも、石灰、日本酒、灰汁、ふすま。水に溶けないという特徴を持つ「藍」を、いかにしてよく染まるようにするかという、人間の試行錯誤を感じます……。
最後には、「ものづくりは悩むことが仕事です。一度は悩んで悩んで、そこから脱出していくステップがあるからこそ、また次に行きますから、完璧は求めずに、自分の気持ちに正直につくっていただくと、とっても素敵なものができると思います」という梅崎先生からの言葉に、参加者のみなさんも勇気づけられたのではないでしょうか。
次回は西陣織のデザインを手掛ける中澤千佳先生の工房「和工房明月」さんへ訪問です!!
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