藍の學校(藍の学校)

2025.01.21

Study room3

S3|箔屋 村田紘平先生より、引箔レクチャー!

こんにちは、藍の學校事務局です。
こちらのページでは、1年を通して、どんなプログラムが開催されたか、「藍の學校」の活動についてお伝えしていきます。
今回は、Study room3、引箔のレクチャーについてのレポートです!

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【Study room3 とは?】
Study room3は、2022年に行った「藍生かし直しプロジェクト」の第2弾となる取り組みです。「藍生かし直し」とは伝統文化である藍染を軸に日本の伝統を再度見直し、新しい視点を見つけることを目的としています。2022年の第1弾では、藍×西陣織の融合に注目し研究を進めました。第2弾となる今回は藍と漆に着眼点をおき、引箔という技法を用いた「藍漆糸」の制作に挑戦します。今回は漆問屋の佐藤喜代松商店さんにもご協力いただき、これまで実現しないだろうと考えられていた「藍漆」の研究を行います。

また初年度の藍の学校では、産地沖縄に焦点を当てています。Study room3でも、受講生自らが現地へ赴き、沖縄の伝統染色である紅型の歴史や作品に実際にふれ、そこから自分達のオリジナルデザインを考えて行きます。

『藍漆×紅型×西陣織』の融合を目的とした現代に活かせるプロダクトの制作を目指します。オリジナルデザインを考えて行きます。

 


 

藍染や漆、紅型などを織り交ぜた、実験的な西陣織の制作を行うStudy room3。

第4回目の授業では、京都・西陣にて三代続く箔屋『楽芸工房』の、村田紘平先生にお越しいただき、西陣織の伝統技法「引箔(ひきばく)」についてレクチャーをいただきました。

 

西陣織の豪華絢爛なイメージを醸すのに大切な役割をはたす「引箔」。

引箔とは、漆を用いて和紙に金や銀の箔をほどこし、細かく断裁してつくられる糸と、その技法をさしています。

西陣織では、引箔を緯糸(よこいと)として織り込むことで、和紙の上で表現した箔や漆による図案を、織物に落とし込むことができるのです。和紙、つまり紙が糸になり織り込まれていると知ると、西陣織の世界にぐっと奥行きが生まれてきますね。

 

左:向こう側が透けているのは、断裁された引箔。右:村田先生が手荷物のが、引箔の織り込まれた西陣織

 

村田先生は「箔屋ですが、実は糸という言葉が隠れていて、僕たちは箔の糸をつくる箔糸屋なんです。」と語ります。

 

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たっぷりの技術が詰まった引箔。

まずは、和紙に膠(にかわ)などを用いて目止めを行い、上に塗布する漆を滲みにくくします。次に、和紙に漆をうすく塗りつけます。漆は箔と和紙をしっかりとくっつける接着剤にもなれば、彩色するという役割も。漆を少し硬貨させたのち、その上からさまざまな方法で箔を散らし、和紙の上に定着させていきます。手で箔を揉んで散らしたり、ざるのような道具と筆を用いて細かくしながら散らしたり。

 

受講生は今回、この箔を散らす作業を体験しました。はじめは箔をとる手もおそるおそるでしたが、次第に楽しげな声が聞こえ始めます。

すごく薄くて軽い箔は、金や銀でなく、さまざまな色のものがあります。なかでも、村田さんのおじいさんの代から引き継がれているという、硫化によって箔を変化させた「焼箔(やきはく)」は光の角度によっても色や輝きが異なり、うっとりする美しさです。

 

箔の色が引き立つ真っ黒な黒漆を塗った和紙

箔を細かく散らすための道具。網目の大きさが違うものを使い分け、箔の表情を変える。

 

指で圧着したり、筆で擦り付けたり。触れ合ううちに、箔という素材の特徴が見える

複雑な表情を持った焼箔

 

こうして箔をほどこした引箔は、箔屋の手を離れ、糸にするために「切屋(きりや)」のもとへ渡り、ギロチンのような道具で両端を残し断裁されます。表現したい風合いに合わせて細さは変わりますが、細かいものは髪の毛ほどの細さに。この技術をもった切屋さんは、今では2件ほどしかないのだそうです。

 

レーザーカッターなどでもカットだけはできるそうですが、現在のテクノロジーでは、引箔のように両端をカットせず残すことが難しいと村田先生。

 

両端を残すのは、図柄を順番通りに保持しておくため

 

こうして糸上になった引箔は織屋さんに渡り、緯糸となるのです。

 

西陣織は20工程にもわたる分業を経て出来上がるといいますが、この引箔という技法一つでも、職人技のリレーが細やかに行われていることがわかります。何よりも、豪華絢爛な西陣織の美しさや、緻密な織りの技術を体現する技法でもありますよね。

 

また、箔の技術を用いてお箸やインテリアなど、現代の日常に美しく馴染む製品を開発する村田先生のお話に、伝統を守りながらも挑戦を重ねる大切さを教えていただきました。

 

次回は、引箔用の和紙にほどこす漆について学ぶため、京都市は北野にある、漆問屋の佐藤喜代末商店さんへ伺います!さらに、藍と漆を調合した藍漆が、いよいよ登場いたします☺️



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